やる気!元気!負けん気! 〜1/2〜

あれは忘れもしない、平成25年7月9日の出来事だった。
前の前のぼくの手ブログでも紹介したが、ある患者さんが来院された。
当時現役航空学生の親御さんだった。
そのご両親から先日手紙が届いた。
それまでの経緯と手紙の内容を書こうと思う。
長文になるが、航空学生に興味がある方だけでなく様々な方に見てほしい内容である。
 
約3年前、旅行で関東方面から鹿児島にお見えになったご夫婦がいらっしゃった。
息子さんが航空学生に入隊していることもあり、ぼくの手ブログで航空学生の記事を読んでいたとのこと。
鹿児島にみえた際ご主人様が幸運(?)にもぎっくり腰になり、ぼくの手整骨院に来院された。
もっとお話をしたかったが、お互いあまり時間がなく、その日は少しお話をしただけで終わった。
それから数日してご夫婦から手紙が届いた。
航空学生の全任期学生(2年生)だった息子さんが区隊長(学校でいう担任)から、
『このままの英語の成績だと2月で辞めてもらうからな。』
と言われ、親御さんに相談したそうだ。。
電話口で息子さんは泣いているような気配だったそう。
同期が約40名いるなかで4人しか指導を受けていなかったらしく、そこも不安材料の一つだったみたいだ。
ご夫婦も息子さんが泣きの電話をしてきたことが初めてということもあり、心配してぼくに相談の手紙が届いた。
ぼくがお伝え出来る範囲で書き留めた。
それから数日後2通目の手紙が届いた。
どうやらその後息子さんは意外とケロッと立ち直っていたらしい。
きっと必死に勉強したのでしょう。
 
その際の手紙に書かれていた親御さんのエピソードとして少しだけ紹介する。
息子さんが相談の電話をしてきたとき、決して甘やかさず、厳しい言葉をかけた。
しかも、息子さんが航空学生に入隊する前も厳しく、部屋に私物を置いていくな、二度と帰ってこないつもりで荷物を整理させた。
極め付けは何があっても覚悟するという意味で髪の毛と爪をもらった。
入隊前、駅まで見送る際、息子さんが
『18年間お世話になりました。』
と言って深々とお辞儀をして旅立った。
なんだか戦前の話のようだが、平成の世で事実として行われた。
航空学生とはそれくらいの覚悟が親にも子どもにも必要なのかもしれない。
 
それからご夫婦と年賀状のやり取りが始まった。
航空学生課程を無事終え、飛行課程に進めたことなど、年々息子さんは前に進んでいた。
そして先日、何気なく朝通勤しポストを開けると一通の手紙が入っていた。
『またファンからの手紙か〜?!』
と冗談を言いながら宛名を見るとご夫婦からだった。
『おぉ!!』
と声が出たと同時に、予感がした。
手紙に厚みがある。
『これは、受かったな!!!』
そう思いながらウキウキして院に入り手紙を開けた。
目に入ったのは写真からだった。
T−4(ブルーインパルスと同型でジョットエンジンを搭載した練習機)のパイロットが乗っていると確認が出来る写真が二枚。
ここで受かったと確信した。
そして、手紙を読んだ。
息子さんがウィングマーク(パイロットの資格を持っている人間しか付けることが許されないもの)を取ったとのことだった。
ぼくは心から嬉しかった。
息子さんに会ったことはないが、本当に自分のことのように嬉しかった。
なんでこんなに嬉しいのか考えた。
自分が航空学生を辞めたことで、ほんの少しでも(本人には直接アドバイスはしていない)関係してる人の役に立ちたかったからだと思った。
人生で何よりも後悔してるし、今でもたまに夢に出てくることだが、以前に比べたらあまり気にならなくなってきている。
今の仕事に集中してるからだと思う。
航空学生のことは心のどこかにこびりついて擦っても取れない汚れのようなものと思っていたが、今はぼくの心の芯の部分に良い色合いで染み付いている。
あの経験があったからこそ今の自分が居るし、変われたと思う。
航空学生を辞めて後悔の中生きてきて、今の仕事をして、偶然(これが必然というのかな?)知り合った方の息子さんが航空自衛隊のパイロットになれたことが本当に嬉しかった。
自分でも不思議に思うが、全く羨ましいと思わなかったし、卑屈になることもなく、本当にただただ本心から嬉しかった。
会ったこともないが心から「おめでとう」と伝えたい。
周りからも教官からも言われてると思うけど、そこがゴールではなく、スタートだからこれからも気を引き締めて日本の空を守ってね。
君の合格は君だけのものではなく、両親・同期・先輩・後輩、もっと大きく言うと、なろうと思ってもなれなかった人たちの分も含まれる。
その中で勝ち取った栄冠は素晴らしいものであり、尊敬に価することだ。
あえてこの言葉を贈ろう。
『勝って兜の緒を締めよ。』
今は合格の余韻を味わいながらも初志を貫き通してね。
本当におめでとう。
 
 
実は本題はこれからである。
この手紙はウィングマーク取得の報告で終わる内容ではなかった。
まさか息子さんが受かったことよりも嬉しい気持ちになるとは思いもしなかった。
 
続きはまた書く。
 

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