薩摩半島半周の苦行

ゴールデンウイークが始まる前から、観光客に挨拶するかのように突然活発になりだした桜島です。
鹿児島市内はありえないくらいの銀世界に覆われています。
外に一歩も出たくない限りです。
 
以前書きましたが、今回のゴールデンウイークは薩摩半島を自転車で半周しようと思っていました。
それを5月3日のゴールデンウイーク初日に敢行することにしました。
これまで鹿児島市内から吹上までの往復70kmくらいを一度だけトライして往復3時間でした。
だったら薩摩半島半周はその倍もないくらいかな、と安易に考えていました。
題名の通り、今のぼくにとって無謀な苦行となりました。
ネタになりそうなことがそれなりにありましたので書いていきます!
長文になりますので以後敬語略します!
 
 
『薩摩半島半周の旅〜ただの苦行〜』
 
朝5時、激しい雨の音で起こされる。
6〜7時の間に出発しようと思っていた薩摩半島半周もいきなり頓挫する。
天気予報を見ても雨雲レーダーを見ても雨でしかなかった。
ゴールデンウイーク初日から計画が破綻したと思った。
その日何をしようかとグダグダ考えていたらいつの間に9時を過ぎていた。
子どもたちとアンパンマンを観ていたらなんか勇気リンリンになり、外を見ても曇っていたので自転車の旅に出ることにした。
出発は10時30分くらいだったかと。
持ち物は自転車に取り付けるドリンクボトル1本、お金3500円、家の鍵、塩熱サプリ4粒、スマホ。
本当に何も考えていなかった。
コースは鹿児島市街地から喜入→指宿→枕崎→加世田→吹上→伊集院→鹿児島市街地とした。
距離がどれくらいとか全く調べず、とりあえず気軽に出発した。
時間は6〜7時間で帰宅予定とした。
↓出発前のショット
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鹿児島市街地は灰によりゴーストタウンになっており、目や口に灰が入ってきたがそれも15分くらい漕いだら問題なくなった。
とりあえずの目標である喜入の石油基地まで特に何の問題もなく到着した。
GWのため車の渋滞があり少し時間を要した。
いつも遠くから見てる石油基地を近くで見るととんでもない大きさだった。
 
↓石油基地前でのショット
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因みにこの石油基地は日本が使う石油の2週間分の貯蔵があるらしい。
戦争になったら鹿児島は最強の補給地点となるのだが、今回はこの話はやめとこう。
 
喜入から指宿の途中にクレープ屋があったので立ち寄った。
いつも並んでいて買えなかったが、その日は時間に余裕もあると思い並んで買った。
15分くらい待って食べれた。
クレープ屋さんだから当然女性客が多かった。
もちろんヤングなレディもいた。
そんな中でクレープの写真を撮るクレープ女子をする勇気はなく、意味不明に早く食べてかっこつけようと思い、30秒で食べ、格好つけながらヘルメットを被りサングラスをして、いつもしないくせにその場でピョンピョン跳ねて準備運動をしてみた。
とにかく、格好つけたかった。
 
少しすると雨が激しく降ってきたがその雨に打たれても漕いでる自分に酔いしれて一生懸命ペダルを漕いだ。
喜入から指宿なんてすぐと思っていたのだが、以外と遠かった。
指宿は素通りして枕崎を目指した。
指宿から枕崎も近いと思っていたが、ここが思いの外遠かった。
なんと指宿から45kmほど離れていたのだ。
そんなに離れているとは考えもせず指宿から枕崎の道がすごく漕ぎやすく心地良く漕いでいた。
目の前にサイクリストがいるとぼくは力の限りその人の後ろに着くまで立ち漕ぎをして、通り過ぎる時に座り平静を装って追い抜いた。
ただただ、格好つけたかった。
 
ずっと海を見ながら漕いでいたが、いつになっても枕崎に着かなかった。
 
↓開聞岳の横を通った時のショット
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自分が思ってる以上に枕崎が遠い存在ということに気付き始めたのは「枕崎まで残り18km」という看板を見た頃だ。
この辺から自問自答が始まった。
 
『おいおい、これ折り返した方が良いんじゃないの???』
『いやいや、ここまできたら絶対枕崎まで漕いでやる!』
『あれ?まだ15kmもあるぞ?なんで着かないんだ?』
『カツオが俺を待ってるぜ!』
 
指宿から枕崎へ向かうこの途中でぼくは少しだけ頭によぎり始めたことがあった。
『もしかして、これって色んな意味でやばくないか?』
色んな意味とは、時間的・距離的・体力的問題だ。
ほぼ全ての意味でぼくは疑心暗技になり始めていた。
そんなこんなでなんとか枕崎に着き、コンビニでうどんとアクエリを買って補食をした。
 
↓枕崎に着いて速攻で立ち寄ったコンビニでのショット
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普段ぼくは20代前半に見られるのだが、この時ぼくは90km自転車を漕いで疲労困憊になっていたため40代半ばになっていた。
 
その頃には自転車に取り付けていたドリンクも残り少なくなっていた。
なんだか手に力が入らずうどんの汁を少し足にこぼした。
どうやら脚だけではなく腕全体にも疲労が迫ってきていたようだ。
『あっ!熱!熱!』
一人で叫び、車の中にいたカップルが声をあげて笑っていた。
その頃からぼくはおかしくなっており、笑われたことが自分への応援に聞こえていた。
笑われたのに、「頑張れ!」と言われたと勘違いして車に向かってキザっぽくポーズをした。
するとカップルは真顔になり目を背けた。
頭のおかしいやつと思ったのだろう。
 
ドリンクボトルにアクエリを補充しいざ出発。
次に目指すは加世田だ。
時計を見ると3時30分だった。
その時は頭がおかしくなり始めていたため、全く冷静に考えられなかったが漕ぎながら少しずつ考えた。
『え???3時30分???確か帰宅予定は4〜5時だよね???なのに今枕崎ってことはどうなるんだ???』
そんなことを考えていると標識を見落とし、遠回りで加世田に行こうとしていた。
長い坂を登り終え、そのことに気付き自転車を降りた。
そのときはまだ余裕があり、腰に手をやり世界を旅しているイケメンサイクリストを装いながらスマホに
『現在地!』
とスマートにフォンへ問いかけた。
始めて自分が枕崎にいることを実感した瞬間だったが、それと同時に自分が3時30分過ぎの時点でこんな場所にいるということに焦りを感じ始めた。
どうやら枕崎は中間地点くらいだったのだ。
その事実に気付いた時、ぼくは一気に疲れが噴き出してきた。
『えぇぇぇ!!!今この状態で半分なの!?!?これ帰れなくない???』
そんなことを考えていたところ、あるサイクリストが声をかけてきた。
 
サイクリスト『どうしました?』
ぼく『あ、ちょっと道に迷ったので確認してました。』
サイクリスト『そうなんですね。軽装ですがお近くの方ですか?』
ぼく『いえ、鹿児島市内からです。』
サイクリスト『え〜、また遠くからなんですね。』
ぼく『いえいえ、これくらい近所のようなもんですよ。』
 
生まれて初めてのロングライドで、迷子になり、帰宅困難になりそうな状況なのに、サラッと嘘をついたのだ!
あそこで出会ったサイクリストさん、嘘をついてすみませんでした。
実はあのときのぼくは、絶望に包まれタクシーで帰りたくて仕方ないバカな初心者サイクリストでした。
 
そんなこんなでサイクリストと別れ、道を確認して加世田に向けて漕ぎ出した。
その頃から別の問題がぼくにはつきまとっていた。
股間が異常な痛みを発していたのだ。
ロードバイク初心者のぼくにとって3時間30分のライドは股間に強烈なダメージを与えていたのだ。
それでも家に帰らなくてはならず、ひたすらペダルを漕いだ。
ロードバイクの漫画で、「弱虫ペダル」というものがある(ぼくは1巻しか読んだことない)。
ぼくはその時「弱虫ペダル」ではなく「SMペダル」になっていた。
拷問でよく見る三角に尖った木馬をイメージしていただくとわかると思うが、あれに乗りながら自転車に乗っていると思ってほしい。
座るたび漕ぐたびに股間に痛みが走るも、漕がないと前に進まないため必死で漕いだ。
一心不乱に漕いでいるといつの間に「南さつま市」という都市に着いていた。
多分この辺のことを「加世田」と呼ぶんだろうと自分に言い聞かせ、トイレ休憩をして道を確認した。
↓股間が絶望的なことになってきている時のショット
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その時いた場所から吹上を目指すと20kmほど余分に距離を乗らないといけないと思い、ショートカットの道を選んだ。
金峰山という山があるのだが、そこを横切っていけばどうやら最短で鹿児島市内に帰れるらしいとわかった。
山越えをしないといけないということはわかっていたが、どれくらいの高さの山なのか調べもしなかった。
そこから地獄の追い込みロードが始まった。
ロードバイクの一番軽いギアは本当に軽い。
疲労もあり山を登っている時のギアが一番軽いギアで漕いだ。
それでも登っても登っても頂上に着かない。
『よし!登りきった!』
下り坂となり、安心したのもつかの間だった。
また目の前に上り坂が見えてきた。
しかも、先ほどより強烈な坂道だ。
ぼくはもう叫びながら漕ぎ出した。
目の前に見える標識は
『ここより追い越し車線』
これが見えるとこれから強烈な坂道があるサインなので心が本当に折れそうになった。
それでも自分をなんとか奮い立たせ漕ぎ続けた。
もちろんこの時、股間も叫んでいた。
自分の生殖能力が破滅的なことになっているのではないかと思うほどだった。
 
そのきつい道中、ゴールデンウィークで帰ってきたであろう血気盛んな若者が乗った軽自動車4人組が車からぼくに対して何かを言いながら笑っていた。
元気であれば間違いなく言い返しただろうが、それどころではないぼくは必死に漕ぎ続けた。
火のついたタバコをぼくの近くに投げ付けられ、その軽自動車は去っていった。
今思い出しても腹立たしい限りだがこの場ではっきりと伝えておこう。
『俺はあの時お前たちのことより、自分の生殖能力の方が気になってたんだよ!』
 
追い越し車線が終わりを迎えるとぼくは激しく安堵した。
しかし、目の前にはまた坂道が見えてきた。
また先ほどの悪魔の標識「追い越し車線」が見えてきた。
「これが最後だ!」
「これを登りきったら鹿児島市内に一直線の下りだ!」
そう言いながら必死に漕ぎ続けた。
ついに終わりを迎えた、と思ってもまだ目の前には強烈な坂道が見えた。
もうこのまま一生登りしかないんじゃないかと思った。
傾斜は7%の標識を目視するもその傾斜がどれほどのものかわからないまま漕ぎ続けた。
登ってる最中にバス停があり止まった。
時刻表を見たが1日に3本しか通らないしすでに最終便(17時)は通過していた。
タクシーがいたら交渉してでも乗ろうと思ったし、バスが停まったら正規料金の5倍出すから乗せてくれという用意はしていた。
だがしかし、あんなど田舎の山道をタクシーが走ってるはずもなく、バスが通ることもなかった。
 
↓水分がなくなったため立ち寄った道の駅でのショット
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日も暮れてきて段々寒くなってきた頃だった。
 
「追い越し車線」の標識を3〜4回見たと思う。
やっとでひたすら下りが続きだした。
しかし、その下りが今度はまた強烈だった。
それまで登った分を一気に下りだしたのだ。
風をきって走って気持ち良い!とかではなく、あまりにもスピードが出過ぎて恐怖が芽生えたため、なるべくスピードを緩めた。
その辺のエピソードはどうでもいい。
ついにぼくは鹿児島市街地のたどり着いたのだ。
時計を確認すると18時40分だった。
あたりは少し薄暗くなっていたがまだ暗くはなかった。
市街地に降り立つとぼくの体力はかなりの限界を迎えていた。
ペダルを漕ぐ力もなく、股間の痛みも壮絶なものとなっていたし、我が精子も全滅だろうと思っていた頃だ。
それでも漕がないと家にたどり着かないため必死で漕ぎ続けた。
市街地には普通に自転車を漕いでる人がたくさんいた。
頭のおかしくなっていたぼくはこう思った。
 
『お前ら何普通に漕いでるんだよ!俺は枕崎から帰ってきたんだぞ!』
『俺は今世界でも最強クラスに疲れてるんだよ!』
『何見てんだよ!俺はお前と違って本気で疲れてるんだよ!』
『お前らなんて、お前らなんて努力不足の人間なんだよ!!!』
 
ぼくの手ブログのコアなファンなら気付いたと思うが、悪なる自分が出た初めてのフルマラソンの時と同じ状態になった。
周りの人は関係ないのに当たり散らしていたのだ。
赤信号で停まる度に頭はうつむき、体力の限界が目の前まで迫っていた。
力なくペダルを漕いでいると桜島の灰が舞ってぼくに鞭を打ってきた。
もうそんなことどうでもよく、とにかく家に帰りたかった。
この時自転車を漕いで前に進んでるはずなのに逆走してるように感じていた。
 
疲労困憊の中、ぼくはやっとで家に帰り着いた。
↓たどり着いたときのショット
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その時の時刻が19時15分だった。
家を出てから約9時間もたっていた。
自転車を漕いでいた時間は7時間にもおよんだ。
それまで3時間しか乗ったこともない初心者ライダーのくせに、無謀なことをしたと激しく後悔した。
ぼくがフルマラソンで消費するカロリーは2730kcalだが、今回の薩摩半島半周はなんと・・・
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5111kcal!!!
我ながら信じられないと思った。
 
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枕崎の先で道に迷ったことを確認できるだろう。
そして、南さつまで心折れ右に曲がったことも確認できる。
本当はまっすぐ日置の方向に行く予定だった。
ぼくはとにかく疲れた。
明らかにフルマラソンを走った時より疲れていた。
人間あまりにも疲れ過ぎるとご飯も喉を通らなくなる。
もれなくぼくもご飯をほとんど食べれなくなっていた。
早々に眠りにつくことにしたが、あまりにも疲れ過ぎて中々眠れなかった。
次の日、起きた時自分の体を確認した。
これが不思議と元気なのだ。
人間とはすごいものだ。
しかし、股間だけは痛かった。
生殖能力が破滅していないことを祈りながら残りのGWを過ごそうと思う。
 
 
以上で薩摩半島半周の苦行の報告を終えます(´Д` )
長文失礼しました!

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コメント

コメント一覧 (10件)

  • 山道の一人は、事故に巻き込まれた場合誰も助けてくれないぞ
    人どおりの道を練習するか、サイクルスポーツクラブに入って競技場で練習しよう

    • >>アニメ師匠さん
      早くパートナーが欲しいところです(^_^;)
      今大学生になった子を勧誘中です*\(^o^)/*

  • お疲れ様でした!距離が進むにつれて、落武者先生の顔に精気がなくなっていく様子がよく分かりました。思わず、笑っちゃいました(´∀`=)
    でも、本当に凄いと思います。私なら、次の日は寝込むかも。。
    かっこいいっす〜(。・ω・。)
    そのうち、大隅半島にも是非いらしてください!お疲れ様でした!

    • >>志武士ししまるさん
      ありがとうございます!
      自転車って意外と体へのダメージは少ないのでそこまでダメージないですよ!
      ある部分を除いては(´Д` )
      そのうち志布志に行きますので、無駄に格好つけてるサイクリストがいたらぼくと思ってください!

  • 南薩出身ですが、すごいですね。坊津方向へ行きかけてますが気付いてよかったと思います。残りの連休Jr.をいたわってあげてください(´Д`)お疲れさまでした!

    • >>きむさん
      そうなんです!
      もう少しで坊津へ行くところでした(´Д` )
      「南さつま市」の看板がなくなったので、これはおかしいと思って確認したところでした!
      我がJr.は再生するのでしょうか・・・。
      このまま使い物にならない小さな生物になってしまわないか今から不安で仕方ありません>_<

  • お疲れ様としか言いようがありません
    いい経験されましたね。オリンピックディスタンス51,5kはサクッと終わりますよ❗きっと
    こちらは天草を想定したコースでいい練習会でした!

    • >>akiさん
      水俣本当に行きたかったです~_~;
      海で練習することなくいきなり本番で海に突入ということになりそうです(´Д` )
      また練習会があるときはぜひ声をかけてください!
      本気で助かります!

  • お疲れ様でした。長距離は尻と股間との戦いですよね。
    尿道が痺れるとかなり心配になれます(笑)  
    でも、乗り込んでいる人って不思議と平気になってくるらしいですよ。

    • >>HEARTさん
      ツイッターでの応援ありがとうございました!
      言われた通り股間の練習になりました(´Д` )
      尿道がケルヒャーの高圧洗浄機でずっと水圧を受けてるように気分でした_| ̄|○
      こんな拷問が平気になる日が来るのでしょうか・・・。

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